上海視察レポート|MWCS後編

前半に続き、MWCSの視察で体験したことを後藤よりレポートしていきます。

バルセロナでの開催から約4ヶ月後に行われた中国・上海でのMWCでしたが、テーマが「Mobile is Everything」から「Mobile is Me」へと変わり、一体どんな内容を見ることができるのか出発前から期待を膨らませていました。実際に訪れて感じたことは、最先端で活躍する方々の強い意志や、新しい可能性に挑む姿勢、そして未来に向け素晴らしい価値を生み出そうとする熱量の高さで、想像を上回る進化がそこには存在していました。中国のスマートフォン所有台数は今や世界一位となり、モバイルを取り巻く環境は進化を遂げる一方です。実際街を歩いて、日本とは異なるモバイル体験に触れることもできました。このレポートでは、MWCSで得たこと、上海での発見を通して、視察全体を総括していきたいと思います。


 

MWCS Conference: mCommerce

MWCS3日目に行われたカンファレンス「mCommerce in Asia: Unlocking New Markets」では、パネルディスカッション形式で5人のスピーカーが登壇しました。紹介を兼ねて、各企業で担っているプロジェクトや将来のビジョンが発表されたあと、アジア市場におけるモバイルコマース(以下Mコマース)が今後どのように盛り上がっていくのかセッションが繰り広げられ、各業界の専門家や、シティバンクやマスターカードといった金融系トップランナーからも話を聞くことができました。中には、海外に本拠地を置くDOCOMO Digitalの方も含まれており、幅広いアプローチからMコマースについて語られました。

DSC_0706

(GSMAデジタルコマース戦略部門の方が進行役を務め、終始穏やかな空気感で行われました)

2020年までにデジタル決済の市場規模が6兆〜7兆ドルにまで拡大し、340億個のインテリジェンスディバイスに接続される可能性があるとマスターカードから発表がありました。このデジタル決済に含まれるのは、モバイルバンキングアプリ、デジタルウォレット、アプリ内のショピング(ECサイトでの買い物など)による電子商取引で、世界各国で急速に市場拡大が進んでいる分野です。中国のEC取引は、すでに過半数がモバイル経由になっているとの話もあり、その勢いが伺えます。

デジタル決済が増加すると、現金を製造するコストが削減され、為替両替の手間を省くことにつながり、銀行にとってのメリットも大きくなります。もともと、アジアでは現金での取引が多いため、決済のデジタル化によるメリットを享受しやすいとの報告もあり、デジタル決済の発展によりMコマースの市場拡大は今後も続くことが予想されます。

IMG_9114

(MWCS展示ブースに出展していた韓国企業「KONA」のデジタル決済アプリ)

こうした背景から、Mコマースの利用者による購買情報はますますビックデータとして蓄積され、現在多方面からの分析が進んでいます。その分析からいえることとして、ユーザーのニーズは地域や文化特性によって多岐にわたっているため、どのようにサービスへ反映させるかについては、国ごとにもっと考える必要があると提言されていました。ユーザーの声を少しご紹介すると、「もっと簡単にログインしたい」などの基礎的なものから、「映画に使われている音楽をその場で手に入れたい」といったサービスに対するものもあるようで、ユーザーからの期待も高まっていることが伺えました。

 

サービスデザインをする人に持っておいてほしい視点

ここからはわたしの見解になりますが、Eコマースの主戦場で活躍している企業も、Mコマースへの投資を拡大しています。分かりやすい例としては、WEBサイトとは別にモバイルへ最適化したサイトが用意され、商品閲覧や決済などが行いやすくなるといった具合に、モバイルでのユーザビリティを日々向上しています。その結果、市場規模は拡大していますが、今後さらに市場を拡大させていくには、消費全体に視野を拡げたUXを検討していくことが必要だと考えます。市場拡大には、既存ユーザーの取引量を増やすか、もっと幅広い世代に受け入れられる工夫が必要となるからです。

UXデザインを行う上で、ユーザーの行動分析は基礎的な要素のひとつですが、性別や世代によって重要視されるポイントは様々です。本質的な欲求が何であるのかを見つけ出せるかどうかが重要であり、ユーザーの購買行動にまで影響を与える心地よい体験を提供するには、ユーザーの消費行動に紐づく感情とユーザビリティの相関性を重視することが大切です。新しい技術を受け入れることは、一般的には難しいことを念頭においてサービスデザインを行うことが、ユーザーに受け入れられる体験に繋がると思います。

それには、実店舗でのユーザーとのコミュニケーションや、ITリテラシーの低い層の声にも耳を傾けるなど、調査する分野やターゲット層を広げ、「消費そのものの全体像」を再設計し、ユーザーにとって心地よいモバイルコミュニケーションの解を出すことが必要です。このような視点でユーザーにとって最高の体験を追求していくことが、弊社ZEPPELINがパートナーの皆様にお役立てできる点だと日々感じています。カンファレンスの紹介でもふれましたが、国別に異なるユーザーニーズがあるため、例えば日本には日本のマーケット独自の特異性があることを理解し、丁寧に紐解くことによってユーザーの潜在的ニーズを取り入れることが必要です。これを実現できた企業やサービスが日本のマーケットをリードしていく存在になれるのではないでしょうか。

 

大胆さは、イノベーションを起こすキーポイント

ここで、視察の話に戻ります。視察最終日に、会場周辺や上海の中心地を散策しました。その中で、大胆なモバイルコミュニケーションに触れることができたため、その体験をここでご紹介したいと思います。

DSC_0634

(MWCSの会場近くにあった店舗の入り口)

こちらは店舗の入り口で、お店の顔となる重要な広告スペースともとれますが、ここに巨大なQRコードの看板が設置されています。その中心には、コミュニケーションアプリWeChat(中国語では微信)のロゴが入っています。ポスターやチラシに、QRコードが入っている広告は日本でもよく見かけますが、メインの看板そのものがQRコードであることに少し衝撃を受けました。訪れたのは朝の時間帯だったため、まだお店はオープンしておらず、何のお店なのか分からなかったのですが、WeChatでQRコードを読み取ってみたところ、WeChat内のモバイルサイトへ繋がる導線が用意されており、果物のお店であることを認識できました。日本版のWeChatには、WeChat Pay機能はついていないためか、モバイルサイト内から購入へ繋がる導線は表示されなかったのですが、もし購入への導線、もしくは購入予約ができるとしたら、その場で購入に至るケースもあると感じました。

こうした大胆さをうむ理由を考えてみると、中国は日本よりも店舗でモバイル決済を利用しやすい環境が既に整っているので、このような表現を採用できるのかもしれません。この看板を見た瞬間は、正直なところデザインとしては微妙だなという感想しか持たなかったのですが、店舗とユーザーを繋ぐ、新しいモバイルコミュニケーションの在り方を考えるヒントを得られたと感じています。

今後、IoTが一般化したときには、もっと自然な表現が可能になると思いますが、今回の体験からモバイルの可能性がどのように拡がっていくのかを実感できたので、今後の体験設計にも活かしていきたいと思います。

 

視察を終えて

今回の視察を通じて、世界の通信事業に携わる企業がどんなことにチャレンジし、どのような課題を持っているのか知ることで、私たちのように新しいデジタルサービスを生み出す企業や、これからの世界、日本をリードする企業の役割を理解することができたと思います。個人的には、「5Gの基盤が整った世界でデジタルの可能性を最大化させ、ユーザーに受け入れられる世界を描くこと」と「実社会における実現性を紐付ける思考力」が必要になると感じています。これまでZEPPELINは、人間本来の感覚の中に宿る「美しさ」をUIデザインの中で表現し、新しい体験を作ってきました。このようなZEPPELINの価値観と今回の視察で得た学びを融合して、ユーザーに受け入れられる新しい時代の体験をデザインしていきたいと思います。

DSC_0389 (1)

ZEPPELIN Inc.

ZEPPELIN Inc.

http://zeppelin.co.jp/company/

ZEPPELIN「WE CREATE BEAUTIFUL WORLDS」というビジョンのもと、 デザインを軸に、ユーザーの日常の体験を生み出す「場」です。

ZEPPELIN Inc. の記事一覧

RECOMMEND

View all