002 スマートフォンから顔を上げる

 テクノロジーはますます進化していきます。音楽や写真やインターネットへのアクセスをたった一つの機器で行えるようになりました。電車の中でもスマートフォンを軽快に操作しながら動画や音楽を視聴している人が増えました。

 電車の中で辺りを見渡せば気がつくのは、ほぼ9割の人はスマホを見ているということです。以前に比べその割合は徐々に増え、もはや当たり前の光景になってしまいました。電車に乗っているほとんどの人が顔を落としてスマホに目を向け、本来車両の中にいては得られない情報にアクセスしている。もし10年前の私が現代にタイムスリップできたとすれば、この光景にとても驚くと同時に、少し物悲しさを覚えるのではないかと思います。

 マインドフルネスという言葉をご存知でしょうか?一つの感情だけに100%集中すると人間は生命の充足を感じることができる、という考え方です。”感情”ですので嬉しい、悲しいといったポジティブなものもネガティブなものも含みます。また、”禅”にも同じような考え方が存在します。一つの物事に100%集中する。もっと言えば「目の前の物事に自分自身が成りきる」という考え方です。マインドフルネスも禅もどちらも似たことを言っているのではないかと思います。私たちは一瞬一瞬の目の前のことに100%集中すると充足感を得られる、ということではないでしょうか。

 「幸せ」についての考え方は様々ですが、私は「今この瞬間に生きていることを実感できる」こと、それが幸せの要素の一つではないかと思います。今、目の前で起きていることに満たされる。そのことを「充足する」と呼んでいます。

 電車の中でスマートフォンに集中する、という考え方もあるかと思います。乗客で混み合う閉じられた空間なのでむしろその方が良いかもしれません。しかし、ふと顔を上げてみれば、目の前に座っている赤ん坊や子どもの笑顔に、窓の外の朝日に輝く街や夕焼けを見られるかもしれません。そんな時には目の前の光景、物事に100%集中してみる。そうすれば、ほんのわずかな時間かもしれませんが、自分が生きていて良かったと思える生命の充足を感じることができるかもしれません。

鳥越 康平

鳥越 康平

http://zeppelin.co.jp

京都工芸繊維大学、工芸学部造形工学科卒業後、韓国サムスン電子にてデザイナーとして携帯電話などの最先端機器の開発に従事。帰国後2005年10月にZEPPELINを設立。

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