001 シンプルにしていく

 便利な世の中になっています。電化製品は充実し、身の回りのことは早く楽に済ますことができるようになりました。通信網が発達したことで、いつでもどこでも簡単に情報にアクセスすることができ、友達や家族とも24時間いつでもコミュニケーションを取れることが当たり前になっています。世界中のあらゆる情報が検索窓にキーワードを入れるだけで手に入り、昔では考えられなかったノウハウや手法さえも簡単に手に入るようになりました。

 利便性を追求することも、情報が簡単に手に入るようになることも、それそのものは人類の発展や、テクノロジーの進化を急速に推し進める原動力です。素晴らしいことだと思います。しかし、人は同時発生的にあらゆるものが身の回りに増えていくと、急速に進んでいることさえも当たり前になってしまい、気がつかないことも増えていきます。例えば、バブル経済もその一つの現象だったのかもしれません。モノや情報が膨大に増えていることで気がつけなくなったこと、見落としてしまっている大切なことがあるのではないか?そんな風に感じることが増えています。

 大学ではデザインを学ぶ学部に所属していたこともあり、学生時代からデザインの考え方に触れてきました。デザインの考え方の根本には「シンプルにする」という考えがあります。思うままに自由につくるだけでなく、その過程において、あらゆる視点からそのモノを「シンプルにしていく」ことがデザインの本質的な考え方です。デザインは問題解決の手段ですが、シンプルとはその究極の形であると言えます。

 反対に、複雑にすることは足し算であり、比較的容易にできます。足すことに対して人は許容することができるので、安心できるからです。シンプルにすることとは引き算であり非常に難しいことです。内容を詳細に練りあげていないと引いていくことはできないからです。この引き算によってシンプルにつくりあげられたものは大きな力を持つとも言われています。

 モノや情報が増え続けていく時代だからこそ、自分たちが成そうとしていることを「シンプルにしていく」。ものづくりや事業活動、ひとつひとつの行動に至る、生きていく上でのすべてのことを「シンプルにしていく」こと。それが求められていくことであり、幸せを感じられる鍵となるのではないか?そう考えています。

鳥越 康平

鳥越 康平

http://zeppelin.co.jp

京都工芸繊維大学、工芸学部造形工学科卒業後、韓国サムスン電子にてデザイナーとして携帯電話などの最先端機器の開発に従事。帰国後2005年10月にZEPPELINを設立。

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