「日本発・グローバル行き」プロダクトに不可欠な事とは?

グローバル市場を追随するアジア勢

 2016年早々、CES2016(Consumer Electronics Show:http://cesjapan.org)とSan Franciscoを視察のため訪米した。CESへの参加は今回が初めてであり、世界各国から17万人以上がこの5日間のイベントのために集まる様子に当初圧倒された。IoT、次世代自動車、ウェアラブルディバイス、VR、ドローンなど、最新のテクノロジーやプロダクトが一挙に展示され見応え十分だった。

 その中でも一番印象的であったのは、中国・韓国など、アジアの大手企業からスタートアップに至るまでの勢いの凄まじさである。彼らのプロダクトは、どこかで聞いたことのあるような内容のものが多かったが、その模倣力に唸った。ただ模倣するだけでなく徹底的にパクる。そこから自分のものにする。その表現力にはとても感心した。対照的に、日本勢は元気のないように感じた。日本企業のブースは人だかりがまばらで、一目で惹きつけられるようなプロダクトに欠ける印象だった。
どうしたら日本発のプロダクトがグローバル市場で存在感を得られるか、スケールしていけるか、視察を通じて考察してみた。

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多様な文化から生まれる大局観

「機能価値」から「体験価値」のシフトが近年言われているが、市場を席巻するようなイノベーティブなプロダクトには「体験価値」の中に市場の破壊的創造要素を持っていることが多いように思う。実際にアメリカで体験したエピソードをご紹介したい。

 まず挙げたいのは、Uber(https://www.uber.com)である。このプロダクトが日本に上陸した際に友人に勧められインストールしたが、この数年間は私のモバイル内でよく眠っていた(4000円のクーポンを獲得した以外は)。それがアメリカに来てようやく目覚めた。車社会であるアメリカでは流しのタクシーが非常に少ない。CESの開催地であるLas VegasでもSan Franciscoでもタクシーをつかまえられず、途方にくれてよく街を彷徨った。散歩が趣味の私であっても1日中よく歩いた、と思う距離であった。現地の友人に話したところ「アメリカでUberは必需品」だと言われ、試しに使ってみたのである。

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 驚いたのは、その体験価値だ。必要な項目をピンでシンプルに入力でき、ユーザーとして知りたい情報は全てそこに表示される。インタラクションも非常に優れていて、正確な運賃やドライバーの情報から、車が何分で迎えにくるかリアルタイムで分かり、不思議と待つ間のストレスを感じさせなかった。また、Pool(相乗り)やUber XL(大型車)などユーザーの状況に合わせたサービスも追加され、単なる移動機能におさまらない「体験価値」を実感することができた。

 このようなサービスが生まれる背景には何があるのか。アメリカでは、生活者にとって環境面のユーザビリティは低いように思う。単一言語の標識。方向を押さないと変わらない信号。写真表記のないレストランのメニュー。この国では、英語という共通言語を持たなければ生活するに難しいように感じる。よく考えれば日本ではインフォグラフィックや複数言語に対応した標識やアナウンス、ユーザーフレンドリーな要素がいたるところに溢れている。これだけ便利につくられた環境の中から、不満や不便さといった課題を見つけることは難しいのかもしれない。なぜなら過剰に整備された情報のおかげで、思考を働かせなくとも、良くも悪くも生活をおくることができるからだ。課題を見つけたところで、それがグローバル市場に受け入れられるかというとそうとは限らない。アメリカでは、コンテクストの低い共通言語の中に多様な考え方や文化を持つ人が生きていて、大局的な課題をセットできることが、イノベーティブなプロダクトを創造する原動力になっているのではないかと考えた。その中で、Uberのようなプロダクトが生まれれば、破壊的創造要素を持って市場をも転回させる力を持つ。

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コンテクストに自らを置く

 人の流動化によって多様な視点をもたらすアメリカでは、日常生活から常に仮説を発見し、それを検証するプロセスがあるように感じる。では、日本のプロダクトはどうか。単一や同一的な環境から大局的な着想を生み出すのはなかなか難しいことかもしれない。しかし、これまで日本企業が数多の功績を残してきたことを踏まえれば、そのコンテクストを読み取る力はかなりあると確信している。自分のことのように体験(課題)を感じられ、深いコンテクストを読み取ることができる人が多いと思う。この力を、満ち足りた環境の中で使い、日常にある常識を疑い、自ら考え動き、市場を創造していくことがデザインの本質(※)であり、日本発・グローバル行に必要な手段、いわばパスポートではないか。市場を創造するために国内を飛び出し、事業の種を見つけに行くことも手段として大いに有り得ると思う。日本発だからといって、国内だけで事業のアイディアを創出することはない。日本的発想で創造すれば、それが日本発だ。

 ZEPPELINでも、培ってきたデザインナレッジに甘んじることなく、積極的にプロダクト開発に取り組んでいきたい。内側に向きがちな視野を是正し、グローバル行のパスポートを手に日々邁進していこうと思ったアメリカ視察であった。

※デザイン=語源の一つであるラテン語のDesignareは、ある問題を解決するために思考や概念を組み立てるという意味が含まれていることから

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福山 秀仁

福山 秀仁

http://zeppelin.co.jp

2015年1月よりZEPPELIN乗船。 採用フローを確立し、人事制度の再設計を実行。ブランド強化のためアライアンス構築、メディア運営、新規プロジェクトを推進している。

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