【ZEP NIGHT vol.5 開催後記】公認会計士:安本隆晴 × ZEPPELIN パネルディスカッション

 <ZEP NIGHTvol.5 公認会計士 安本隆晴 × ZEPPELIN デザイン視点による成長し続ける組織の本質>

 

開催日時 :5月28日(木)17:00 – 20:30
プログラム:ZEPPELIN代表挨拶
      パネルディスカッション「 デザイン視点による成長し続ける組織の本質 」
      安本隆晴氏へのQAタイム
      懇親会

 

日本には386万社※の企業(個人事業主も含む)が存在しますが、その中には、100年を超える長寿企業と数年で伸び悩んでしまう企業とが存在します。どの経営者も志し高く事業を始めたにも関わらず、「成長」という点において差が生じてしまう理由は何なのか。その二者間にある本質的な違い、そこには「組織の力」がありました。

今回は、公認会計士、株式上場コンサルタントとしてご活躍され、ユニクロが上場に至るまでを影で支えた立役者である安本隆晴氏をゲストにお迎えし、参加者からの組織にまつわる悩みや疑問へのアドバイスを交え、組織が成長し続けていく秘訣、経営者が鍛えるべき力についてお話しいただきました。

※企業数 - 中小企業庁:中小企業・小規模企業者数 - 経済産業省「全規模」より

 

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公認会計士であり、ZEPPELINの経営顧問でもある安本隆晴氏

 

<ゲスト紹介>早稲田大学商学部卒業後、朝日監査法人(現:あずさ監査法人)、株式会社ブレインコア取締役を経て、安本公認会計士事務所を設立。現在、株式会社ファーストリテイリング、アスクル株式会社、株式会社UBIC等の監査役を兼任。また、『ユニクロ監査役が書いた 強い会社をつくる会計の教科書』『ユニクロ!監査役実録』等、多くの著書を執筆。現在、公認会計士・税理士、株式上場コンサルタントとして活躍している。2013年、ZEPPELIN経営顧問に就任。ZEPPELINの中長期的ビジョン実現に向け、企業価値向上に必要な会計思考を軸として、経営戦略や組織体制の構築・運用などの経営基盤の強化を陰で支えている。

 

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写真左から、モデレーターの谷本さん、ゲストの安本氏、ZEPPELIN代表鳥越

 

パネルディスカッションは、経済キャスターとしてもご活躍されている谷本有香さんにモデレーターとして進行していただき、ZEPPELINのWebサイト上で公開された、ZEPPELIN代表鳥越との対談記事の内容について触れた後、「多様化する時代の中で、組織がなすべきこと」についての問いから始まりました。

 

ー 長寿企業の代表格エルメスに学ぶ、環境の変化に適応する力

日本経済の状況はグローバル化の波が押し寄せており、経営していくのがなかなか難しい時代になってきている。 経済が多様化していく中で、長く成長し続ける企業となるにはどうすれば良いのか?

 この問いに対し安本氏は、エルメスを例に挙げ、「エルメスは1830年代の創業当時から馬具を作っていたが、1900年初頭にフォードが自動車を作った。」と述べ、時代の流れと共に変化した人々の移動手段について触れた後、「馬での移動が無くなり馬具が不要になっていく中で、彼らがしたのは"方向転換"だった。」と語った。

 また、「エルメスの職人の技術を活かし続ける方法・事業を考えたとき、彼らは鞍をしまうバッグも作っていた。そこで、そのバッグを小さくしたら普段使いできるんじゃないかということで、これまでの顧客であった貴族にそのバッグを販売し始めた。」と続け、企業として方向転換をした結果、それがお客様に受け入れられ、鞍ではなくバッグという、これまでとは違った革製品という新しい価値を提供できる企業となったことで、現在まで続く長寿企業となっていることを説明した。

 「環境の変化を見て自分たちの体の向きを変える、事業を変えていく。また、様々な変化の影響を受けた時に、試行錯誤を続けて、自分たちが持っているノウハウをそのまま活かせるような、一番良い事業を探し出せるか。それが重要。ダーウィンの進化論ではないけれど、強いものというよりも、変化に対応してきた生物だけが生き延びていくということは、まさに企業も同じ。」と、企業が長く続いていく秘訣のひとつとして、環境の変化に適応していくことの重要性を強調した。

時代に合わせて変化が必要ということで、組織のデザインも変えていかねばならないというときに、気をつけなければならないポイントは何か?

 鳥越は、かつて自身がサムスン本社で働いていたときに現場で起きていた状況について、「携帯で言えば"どれだけカッコイイ携帯"を作るか。つまり、プロダクト自体の見た目が重視され、そこに価値が置かれていた時代だった。」と述べた後、当時から、世の中の価値が"モノ”から”コト"に移っていくことを予測していたと付け加えた。

 「最近はより一層、企業の中で"プロダクト”から”体験"のデザインに価値がシフトしている。恐らく、それをいち早く取り入れた企業が勝っていっていると思っている。日本企業はちょっと遅れてしまったかもしれない。」と述べた上で、「ポイントを挙げるとすれば、エルメスのように、自分たちが持つそれまで培ってきた経験値、技や知見、リソースを"時代が求める体験"に合わせてどう変えていくのか。"モノ"ではなく"コト"を意識することが大切。」と、"変化"と"デザイン"に絡めて、体験を意識することの重要性について繰り返した。

 

ー 視点を変える(俯瞰と客観視)

企業はまさに生き物のようであり、幾つか成長段階があるが、それぞれの段階における経営課題の見出し方とは?

 変化、成長していく企業の中で経営者がぶつかる壁、経営課題に関する問いに対し、安本氏は、経営者がやるべきこととして”俯瞰”と”客観視"をキーワードに挙げた。「経営は、超短期、短期 、中期、長期の全方位を見ながらやっていく必要がある。経営者は、目の前のことだけでなく、俯瞰して中長期で会社が向かう方向性や、皆で力を合わせて何をやるべきかなどを考えられていなければならない。 」と述べ、視点を変えることの重要性について言及。

 「必要なのは相手の立場になって考えること。視点を変えるだけで、いくらでも解決の糸口は見つかる。見方とか視点を変えるだけで世の中って随分変わる。」と続け、客観視できることは、社内外で問題にぶつかったとき、部下を指導するときにも活かされることを加えた。視点を変える方法として、キュビズムが起きた時代のピカソの絵を紹介し、「ピカソはいろんな視点を一挙に二次元の中に凝集している。それに近いような考え方や視点の持ち方をすれば、問題解決の糸口は出てくる。決して難しいことではなく、自分ともう一人の自分を別の位置において、違う見方をすることを意識すればいい。 」と説明した。

 

 対し鳥越は、この安本氏の見方を"デザイン的”とし、視点を変えることの重要性について賛同した上で、Airbnb※1の事例を紹介。「今やすごい勢いで成長しているAirbnbのサービスでさえ、はじめの3年間位は伸び悩んでいた。その時に、投資家のポール・グレアム※2が言った言葉が「とにかくユーザーになりきってみなさい」と。そのアドバイスに従い、ユーザーになりきって自分達のサービスを使ってみたら、いろんな問題点を含めた発見があり、そこから物凄い勢いで成長し今に至っている。視点を変えると、人間って気付く。」と述べた。

 更に、視点を変えるという点について、「様々なクライアントさんとお仕事をさせていただく中でジレンマに感じるのは、実際のユーザーとして現場に行ったり、そもそもオフィスの外に出る方が少ないということ。その傾向は、大企業であればある程強い。」と残念な表情を浮かべつつも、「 私たちは、プロジェクトの最初の段階で、まずクライアントさんに"体験"して視点を変えていただくことを提案しているが、"体験” をしたプロジェクト程うまくいっている。視点を変えることの重要性は、100年、200年先も変わらないと思う。」と、実績に基づく自信をのぞかせた。

※1 休暇の宿泊を目的とした宿泊施設を貸し出す人と借りたい人を結ぶ、新しいかたちの宿泊サービス
※2 2005年に主にスタートアップ企業への投資を行うVC、Y Combinatorを設立。Airbnbにも出資。

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『人間は経験していないことはつくれない生き物。新しさは、経験することの先にしか生まれない。(鳥越)』

 

ー  成長を加速させる「未来の組織図」

組織デザインの骨子、組織図についての考え方、経営戦略を実現させていくためには、どのような組織図を作っていけばいいのか?

 安本氏は問いに対して、「組織図というのは、経営戦略をもとに5年後10年後どういう会社にしていたいかという考えを表すものだと思っている。」と述べた。ご自身が上場までを影で支えてきたユニクロを例に「ユニクロは多店舗展開をする衣料品の小売業。組織図を作りはじめた当初、最低限必要な部門としてあがったのは、商品を仕入れてくる部門、店舗を運営する部門、店舗を開発する部門、それらを管理する部門の4つだった。」と紹介。続けて、組織図を完成させるまでに必要な作業として、以下の通り説明した。

 ・部門(機能)別に分解したら、5年後その組織の姿を実現するための細かい仕事の塊を書き加える
 ・それぞれの仕事の目的・そこで働く人の役割や進捗度をはかるための指標などを書き加える
 ・今いる社員を当てはめる
 ・空欄と兼務をどう解決するか考える

 「5年後の組織図を書いている訳だから、担当者が空白や兼務だらけになる。」と説明した上で、「これらの空白や兼務を5年の間にいかに解くか、その予定表も組織図に書く。これが本当の組織図。こうやって組織図を作り上げなければ、絶対に抜け漏れが発生し、会社は意図していない違った方向に進んで行ってしまう。この組織図をもとに環境の変化に伴って微調整していけば、目指す組織に近づいていく。」と述べた。

理想の組織デザインとはどのような状態か?

 鳥越は、デザインの思考を持つ人材を経営に配置することの意義について触れた上で、「とにかく部署の壁を無くす、ということ。これさえ解決できれば、日本の大企業も世界でトップに食い込んでいくと思っている。日本の企業で多いのは、別の部署で同じ様なことをしていたり、隣の部署であっても、全然違うことを言っていたり、情報が共有されていなかったり、そんなことが起きている。」と指摘し、「これまでは、部署をつくってそこで機能させて…という形が時代にも合っていたのだと思うが、これからは、部署の壁をうまく無くし、壁がない状態でありつつも、機能というか役割が綺麗に割り当てられていると、有機的に働けるということが実現できると思っている。それが理想的な組織だと考えている。」と結んだ。

 

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総括として、安本氏は「まずは自分の頭で考え、行動し続けることが重要」とし、その試行錯誤の繰り返しの中で、「仲間を巻き込み、大きな流れにしていけば会社を変えられる」と続けた。また、「普通の人々をどう変えてチームワークをつくるかが大事」と述べ、チームワークを構築するための鍵は、特別な能力を持つ人材の有無ではなく、力の合わせ方、適材適所をかなえるために変化し続けることの重要性について 触れ、トークを括った。

経営には正解が無い。だからこそ経営者は、様々な変化を具に察知し、常に組織を「あるべき姿」に変化、適応させ続けることが求められる。その繰り返しの先にこそ、成長し続ける企業の姿が見えたセッションとなった。

 

ー ZEP NIGHTとは? ー

人数限定の参加型トークイベント。毎回ゲストをお迎えし、 ゲストの専門分野や、デザイン/UXとの関わりなどについて語っていただきます。 参加者全員がテーマについて自由に思いを発信できる、インタラクティブなイベントです。 「美しい世界をつくる」というZEPPELINのビジョンのもと、 参加者の方々と共に語り、気づき、新しい世界をつくりあげていくことをテーマにしています。

次回以降の開催予定は、ZEPPELINのFacebookページでお知らせいたします。お楽しみに!

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