成長し続ける組織の本質 第5回「『解く』から『つくる』、これからの経営」

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第5回 「解く」から「つくる」、これからの経営

安本隆晴(公認会計士/税理士/株式上場コンサルタント)

早稲田大学商学部卒業後、朝日監査法人(現:あずさ監査法人)、株式会社ブレインコア取締役を経て、安本公認会計士事務所を設立。現在、株式会社ファース トリテイリング、アスクル株式会社、株式会社UBIC等の監査役を兼任。また、『ユニクロ監査役が書いた 強い会社をつくる会計の教科書』『ユニクロ!監査役実録』等、多くの著書を執筆。現在、公認会計士・税理士、株式上場コンサルタントとして活躍している。

2013年、経営顧問に就任。ZEPPELINの中長期的ビジョン実現に向け、企業価値向上に必要な会計思考を軸として、経営戦略や組織体制の構築・運用などの経営基盤の強化を陰で支えている。

− 「変わり続ける姿勢」と「変わらない哲学」

鳥越
日本は世界の中でも長寿企業が多い国と言われている中で、
ZEPPELINも何千年続くことを目指しているんですが…
組織が長く続く秘訣って何だと思われますか?
安本
日本に100年を超える長寿企業が多いというのは、
世界各国からやっと注目されてきましたね、
2万7千社くらいあるんですよね。

歴史がある長寿企業ということは、
それだけ環境の変化にさらされてきているわけですよね。
鳥越
そうですね。長ければ長いほど変化の波にぶつかっていますよね。
安本
それらの企業に共通するのは、
創業のときから守ってきた「変えてはいけない部分」と
「常に変える必要がある部分」の
2つがあるということだと思っています。

両方から考え、刺激しながら、
常に、「全体最適化するにはどうすればいいのか?」
を考え続けてきたからこそ、
生き延びてきたんだと思うんですよね。
鳥越
なるほど。
安本
例えば、フランスの企業で言えば、
かつては馬具ばかり作っていたHERMESが長寿企業ですよね。

彼らは、自動車が出てきても馬具を作り続けていたけれど、
時代はどんどん変わっていく…
そんな変化にさらされた中で、
今いるお客さまに何をどうすれば買ってもらえるか?
馬の繋がりから「馬の革でバッグを作ったらどう?」みたいな、
たぶんそういうことを考えたんだと思うんですね。
鳥越
昔から支持し続けてくれているお客さまに対し、
自分たちに何ができるかを考え続けた結果、
新しい形で価値を提供できることを思いついたんですね。
安本
つくる商品は全然違う物に変化していっても、
やっていることは昔からブレてないですよね。
鳥越
そうですね。
日本の長寿企業も、同じように、
軸を持ちつつも、周囲の変化へ適応してきたから
100年続いているということでしょうか。
安本
そうだと思います。
良いと信じたら絶対守りぬく変えない部分と、
お客様を大事にするために、常に変化させていく部分、
その姿勢っていうのはすごく大事なんですよね。

今まで自分たちの企業が培ってきたもので何ができるか、
どうすればお客様に喜んでもらえるか?っていうことを
ずっと考え続けてきているんだと思いますね。
鳥越
変化していくことの必要性は分かるのですが、
どこまで変えるのかの判断が難しいと感じています。

例えば、Disneyはもともとアニメーションの会社でしたが、
途中からテーマパークを作りましたよね。
Disneyのお客様を大事にするための変化は今もうまくいっていますが、
うまくいかないケースも多い気がしていて。
これらの根本的な違いって、何があるのでしょうか。

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安本
基本的には、先ほどお話したように企業は生き物なので。
お客さまから見られているものというのは、
商品でも何でも流行り廃りがあって、やっぱり飽きるんですよね。

話題の外食チェーンでも、たぶん2年くらいで飽きられてしまう。
そうならないために、内装や提供するメニューや価格を変えたりして、
いろんな工夫をしますよね。

そういったいろんな工夫は、
業績が伸びているときにこそやらないといけなくて。
落ち始めたときにやったって絶対駄目なんですよ。
伸び盛りのときに「次の手をどうするか」
ということを常に考えていると、
底を打つ前に反転できる道はあると思うんですよね。
鳥越
手を打つタイミングで、結果が全く変わってくるんですね。
安本
そうなんです。
だから、環境の変化を察知する仕組みというか、
経営者が常にそこを考えているのと、
現場の人たちの肌感覚みたいなものが経営者層に直に伝わるかどうか、
この2つがすごく大事なところです。
鳥越
時代の変化とともに、
お客様についての考え方も変えなければいけないときが来そうですよね。
安本
そうですね。
お客さまをいかに大事にして、お客さまと一緒に成長していけるか、
っていうことを考えると、
自分たちがどう変わっていく必要があるのかが
自然に見えてくると思います。

お客さまのニーズや嗜好、企業にどうしてほしいと思っているのか。
それらの要望が分かったら、
それに応じて自分たちを変えていくことができる。
それを常に察知し、変えていけることが長生きにつながると思います。
鳥越
相手の変化を俊敏に感じる力が重要なんですね。

− 適切なタイミングで課題をつくる

鳥越
良い組織や良い企業が長く続いていくためには、
次世代、つまり後継者の問題も関わってくるかと思うんですが、
やっぱり、ビジョンを語り継いでいくことが重要なんでしょうか。
安本
そうですね。
経営者が創業するときって、自分の次とか企業の行く末については
なかなか考えが及ばないんです。
結局、駄目になってきたらなんとか再生してほしいと願って、
金融機関とかいろんな人に泣きつくことが多い。
僕も企業再生の仕事を若干やっていますが、苦労が絶えないんですよね。
鳥越
たしかに大変そうですね。
安本
次代を担う人たちをいかにつくるか?というのは、
今いる経営者の大事な使命だと思います。
ただ、その前に、自分の会社をどうしたいかということを考え、
実際に行動しなければならないのに、躊躇してやらない。
つまり、石橋叩いても渡らないし変われない経営者がすごく多いんです。
鳥越
私は、叩かずに渡るかもしれないですね(笑)
安本
本当は、どんどん試行錯誤すればいいんですよね。
失敗したとしても、どうすればうまくいくかといった学びがあるし、
きっと同じ失敗は二度と繰り返さないじゃないですか。
良い方向に持っていける術が分かると思うんですよね。
だから試行錯誤を繰り返すってことをやってほしい。
そのやり方が一番重要で。

それは何かというと、「課題をつくる」ということなんですね。
課題をどう設定するか、ということの方が課題解決より大事なんですよ。

いい経営者は、いい課題をちょうどいい時期に設定できる。
その経営課題を、社員みんなで解消するように努力すればいい。
しかも、いい経営課題だと解消できるんですよ。
どんな経営課題も、MBAやケーススタディなんかで、
解消の仕方を勉強してる人は多いから、意外とできるんです。
でも、課題をどうやって設定するかって講義を聞いたことあります?
鳥越
ないですね。
安本
「あの山に登りたい」というのと同じですね。
登りたい山を設定することは、すごく大事なんですよね。
鳥越
達成したい目標値、
どのくらいのレベル感かも考えないといけないですよね。

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安本
そうそう。それもすごい難しいところで。

例えば、柳井さんの話ばっかりすると怒られるかもしれないけど(笑)
ユニクロの売上げが3千数百億円のときに
「売上高が1兆円にいきたいね」なんていう話をし始めたんですよ。
みんなボーっとして、
最初は全く1兆円達成なんて思い描けなかったんですけど。
それでも、その頃からずっと、1兆円ってどうなることか、
ということを思い描いていたわけですね、みんな。
これが大事なんです。

「1兆円」という言葉を言い続けていたから、結果的に達成できた。
鳥越
言葉に出して思い描き続けることって、すごい力があるんですね。
安本
そう。思い描くことが大事なんです。

例えば、MDや生産管理担当者だと、どれだけの枚数を
海外の工場に発注するかっていうのを思い描くじゃないですか。
今の3倍とか2.5倍の分量ですよ。
1回の発注に1万枚だったら3万枚とかになるわけです。
それが思い描けると、
すごい仕事量が増えるって想像できるじゃないですか。

この想像するということがすごく大事。
目標値の周りで何が起きるかということを、自分の仕事に
置き換えて考えるってことがすごく大事になってきますよね。
だから登りたい山をちゃんと設定できる。
鳥越
やっぱりビジョンがないと、課題も見つけ辛いんですかね。
安本
そうですね、ただ、あまり遠すぎても駄目なんですよね。
鳥越
確かに、何も思い浮かべられなかったら
どう進んでいいか分からないですもんね。
安本
僕は高校野球が好きなんで、高校野球にすぐ引き直しちゃうんですけど。

優秀な野球の守備コーチの場合、
選手の守備練習の様子なんかを見ていると、
すぐに、どれくらい動けるのかが予測できるんです。
それで、その選手の手の届く範囲の10センチ先を
わざと狙ってノックして打つんですよ。

その選手は、最初はとれなくても、
同じ練習を繰り返しているうちに、だんだん取れるようになって、
守備の範囲の幅が広がっていくようになる。

これは目標値の設定と同じですよね。
すごい取りやすい球なら、誰でも取れます。
だからたまにジャンプさせたり、
いろんなボールをノックしようと思うんですね。

たぶん経営者も同じなんです。
鳥越
いやぁ…去年の私は、ショートの選手に
場外ホームランを取ってこいみたいなこと言ってたかも…
安本
守備範囲じゃない所。
鳥越
そう、全然関係ない所に(笑)
安本
空振りしてボールが届いていなかったり(笑)
鳥越
(笑)反省すべき点がありそうですね。

つまり、よい経営者というのは、
組織としての目標を達成するために、社員をうまく成長させながら、
共に少しずつ思い描いた姿に近付かせられる、
現実として引き寄せることができるんですね。

ZEPPELINも成長し続けるために
まだまだ勉強させていただかなければならない点が多そうですね…
今後とも宜しくお願いいたします。本日は有難うございました。

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