成長し続ける組織の本質 第2回「『熱闘「株式公開」』そしてあの企業からの電話」

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第2回

『熱闘「株式公開」』そしてあの企業からの電話

安本隆晴(公認会計士/税理士/株式上場コンサルタント)

早稲田大学商学部卒業後、朝日監査法人(現:あずさ監査法人)、株式会社ブレインコア取締役を経て、安本公認会計士事務所を設立。現在、株式会社ファース トリテイリング、アスクル株式会社、株式会社UBIC等の監査役を兼任。また、『ユニクロ監査役が書いた 強い会社をつくる会計の教科書』『ユニクロ!監査役実録』等、多くの著書を執筆。現在、公認会計士・税理士、株式上場コンサルタントとして活躍している。

2013年、経営顧問に就任。ZEPPELINの中長期的ビジョン実現に向け、企業価値向上に必要な会計思考を軸として、経営戦略や組織体制の構築・運用などの経営基盤の強化を陰で支えている。

− 未来をつくるフローチャート

鳥越
大学を卒業されて会計士になられてからはどんな感じだったんですか?
安本
一応、9年3カ月の間、
監査法人という公認会計士ばっかりの会社に勤めてましたね。
今は1,000人を超えているんじゃないかな。
鳥越
どんな仕事をされていたんですか。
安本
私がやっていたのは会計監査といって、
会社の決算書が正しいかどうかをチェックする役割なんですが、
これを毎年やっていました。

大きな会社って、証券取引所という所に上場するじゃないですか。
今、日本では3,500社くらい上場しているんですが、
財務省や証券取引所に会社の決算書を報告する義務があるんですね。

ただ、会社の決算書って、
自分たちが正しいと言っても誰も信じてくれないので、
第三者の監査法人、公認会計士がチェックをして
その正しさを証明した報告書を作成するんです。
会社は、その報告書と決算書と一緒に取引所に出すことになるんですが、
私がやっていたのはその監査報告書の作成に関わる仕事ですね。
鳥越
なるほど。
いろんな業種・業界の会社があるから、会計だけではなくて、
各業種のいろんな知識も必要になってくるんですね。
安本
そうですね、それぞれ違いますからね。

監査に行く会社ごとにいろんなことが起きるので、
どういうふうに会計処理をすればいいのかとか、
いろいろ相談されましたね。それぞれの会社の人と、いろんな議論をしょっちゅうしてました。

この仕事をやって分かったのが、
決算書をチェックするっていうのは
「つくる」仕事ではないじゃないですか。
どっちかっていうと「壊す」みたいな(笑)
過去1年について、根掘り葉掘り聞くっていう。

でも本当は、会社の人は過去の話よりも、
未来の仕事を一緒にやってほしいと思っているんですよね。
だけど、決算の仕事をチェックするっていうのは、
過去1年間の仕事の振り返り。
その時間がもったいないわけですよ、本当は。

僕も、過去の話ばかり聞くよりも、
今これからどう進むのか、っていうのに興味があるから、
未来に向かった仕事を作ってやってましたね。
鳥越
そうなんですね(笑)
安本
メーカーに行ったら技術研究所の人と喋ったりもしてましたね。
会計士としてはあるまじき行為なのかもしれないですけど(笑)
よくそういうことをやっていました。

あと、新しい会社に行くと、よくフローチャートを書いてました。
どういうふうに仕事が流れているのかを図で表したものなんですが。
鳥越
もうその当時から作られてたんですね。
安本
すごい珍しい会計士だったみたいですね。

作ったフローチャートは、
会社の人から「ください」って言われることが多くて、
新人教育用にいろんな会社に残してきました。
30年も前なんで、たぶん今はどこにも残っていないと思いますけど、
本当に喜ばれましたね。
鳥越
会社の財産ですよね。

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安本
フローチャートがあれば、僕らも監査するときに、
どこをどうチェックすればいいのかっていうことが
一目瞭然じゃないですか。

ここから仕入れて、ここでこういうふうにつくって、
外注先に頼んで、こういう物がきて、完成して、
こういうふうに出荷する…
そういった仕事の流れを一目で分かるように、
結構長いフローチャートにして。
どこの会社に行っても、そういうことをしてましたね。
鳥越
ZEPPELINでも今では普通にありますけど、
あれは安本先生が2年前に「ないと駄目だ」って言って、
ちょっとずつできたものなんですよね。
安本
フローチャートを作って皆が見えるところに置いておくと、
皆で議論できるんですね。
どこにどうチェックを入れればこの間違いが防げるか、とか。
例えばお客さんへの請求を間違って2回してしまったとき、
何が原因で、どう対処して次回からはどうやってミスを防ぐのかとか。
意外とそういうことはやってないんですよね。

図を見ながら、
どこで・だれが・どうやってチェックするかっていう
承認のルールとか、ダブルチェックの仕組みをつくるってことですね。
そういうことをよくやってましたね。
鳥越
ZEPPELINも、フローを作ったことで、組織としても、
ひとつひとつの仕事に対する意識が変化したと感じていますし、
本当にいろんな仕組みが整ってきたと感じています。

まだ不十分な点もあると思うので、
新しく作っていかないといけないですね。
安本
何事も段階を経て、ですからね。

− 『熱闘「株式公開」』

安本
話を元に戻すと、会計監査という過去の結果をチェックする仕事って
性に合っていないと気付いて。
ちょっと時間がかかりましたが、監査法人を辞めさせてもらって、
その後、会計士とか不動産鑑定士とか税理士とか何人かの友達で、
経営コンサルの会社を作ったんですよ。

ただ、そんな急に仕事は来ないじゃないですか。

それで、なんとかして仕事を持ってくる方法はないかって
皆でいろいろ考えた結果、
一番いいのは本を出版することだと思いついたんです。
僕らみたいなできたてホヤホヤの会社が
本を使って宣伝するなんてことはなかった時代なんですけど、
知り合いにダイヤモンドの編集マンがいたので、
5冊連続出すっていう企画を持ちかけたら乗ってくれたんですね。

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鳥越
すごいですね!
安本
それで、みんなで分担して書いた最初の本が
『経理マンの逆襲』っていう本で。

経理マンっていうのは、
社長の黒子で常に金庫番みたいな人が多いと思うんですが、
一番経営者の近くにいるのに、
なんで参謀として使われないんだろうか?と。
参謀として自分たちに自信を持って、
社長に文句言ったり、意見を言えるように、
そこを応援しようという本を作ったんですよ。

これが4万部だったか5万部だったか忘れましたけど、結構売れて。
本の中で僕は『経理マン化石度チェック』ってチェックリストを作って。
これ全部チェックして駄目だと、
あなたはスミソニアン博物館に行きなさい、って。
鳥越
(笑)
安本
で、ランクを3つ位つくって、だんだん成長していく経理マンみたいな。
「チェックリストだけ、いろんなところで使わせてもらいました」
という話を後で何度か聞いたんですけど。
結構そのリストだけ一人歩きしてましたね。

その後2作目に書いたのは『熱闘「株式公開」』っていう本で、
この本は僕が100%書いたんですけど。
その当時、公認会計士や証券会社が書いた上場のための
準備本みたいなマニュアル本は、難しい本ばっかりだったんですね。
証券取引場が上場基準を作ってるんですけど、
それの解説本みたいな感じなんですよ。
鳥越
たしかに、上場という言葉だけで難しそうな感じがしますしね。
安本
証券会社が書いた本も、監査法人が編集・出版した本もそうで。
だから、普通の語り口調で分かりやすく、
どういうふうにしたら上場できるかというのを事細かに書いたんですね。
編集マンに見せたら
「これ面白いけど、もっと面白くするには、間に小説書きなよ」
って言われて。
鳥越
小説を書かれたんですか?
安本
小説なんて書いたことないから悩んだんですが、
「上場準備を考えている若い会社に、ベンチャーキャピタルの
営業マンがやって来て、いろいろとアドバイスする…」
というようなストーリーを作ったんです。
それで、見せたら「ああ。これそのまま出そう」って言って、
そのまま本になっちゃったんですね。

すると、出版後にいろんな人から
「会いたい」という連絡をもらうようになって。

その中に、山口県の宇部市に住んでる、柳井正(やないただし)って人が
会いたいと言っているという電話がきて(笑)
鳥越
(笑)
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