成長し続ける組織の本質 第3回「ユニクロも昔は中小企業だった」

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第3回 ユニクロも昔は中小企業だった

安本隆晴(公認会計士/税理士/株式上場コンサルタント)

早稲田大学商学部卒業後、朝日監査法人(現:あずさ監査法人)、株式会社ブレインコア取締役を経て、安本公認会計士事務所を設立。現在、株式会社ファース トリテイリング、アスクル株式会社、株式会社UBIC等の監査役を兼任。また、『ユニクロ監査役が書いた 強い会社をつくる会計の教科書』『ユニクロ!監査役実録』等、多くの著書を執筆。現在、公認会計士・税理士、株式上場コンサルタントとして活躍している。

2013年、経営顧問に就任。ZEPPELINの中長期的ビジョン実現に向け、企業価値向上に必要な会計思考を軸として、経営戦略や組織体制の構築・運用などの経営基盤の強化を陰で支えている。

− 「7人の侍」が揃う時

安本
小郡商事※の浦さんっていう、当時総務部長だった方から、
「いやぁ社長が読んで感動して、ぜひお会いしたいと言ってるんです」
と電話をもらったんですよ。
それが1990年の9月なので、今から24年前ですか。

(※ 現在のファーストリテイリング社)

鳥越
ですね。
安本
それで、会いに行ったんです。

社長室に行ったら、うず高く本が積んであって。
社長室って本当に狭いんですよ。
その狭い部屋の中で、衣料品の世界の話とか、
アメリカのIT企業の成功物語みたいな話を聞いて、
すごい読書家だなと思いましたね。

それで、
「このままいったら日本の衣料業界は全部駄目になる。
ギャップとかザラなんかの欧米の新興企業が日本にどんどん上陸して、
そこが全部席巻してしまう、それをなんとかしたい」
ということを言われて。

僕が行った当時のユニクロは7店舗ぐらいしかなくて、
しかも扱っているのはバラバラの商品だったんですが、
「いろいろ大変なんだけど、これを全国展開したい」って言われて。
お金もないし、じゃあそのためには上場しかないですね、
ということになったんです。

本当、お金は苦労しましたね…
1円2円じゃないけど本当に毎日毎日苦労しました。
鳥越
今では考えられないですけど。
安本
もちろん上場したからですよね。上場するところまではもう…
鳥越
上場する前は結構厳しかったんですね。
安本
もう全然。
鳥越
小郡商事の社長になったとき、柳井さんはおいくつだったんですか?
安本
24歳ぐらいですかね。
その頃7人社員がいたんですけど、
全然話が合わないんでどんどん辞めていって1人になっちゃいましたね。
鳥越
ユニクロっていう名前はもう当初から使ってたんですか。
安本
僕が行ったときはすでにユニクロでした。
当時は商品を買ってきて売るだけの、
いわゆるバイイングをしていましたね。
鳥越
徐々に自社でつくるようになってきたんですかね?
それともいきなり変わった?
安本
もうちょっとずつ、ちょっとずつ。いきなりできるわけないですから。

だから、みなさんものすごい苦労しましたね。
一方では上場準備の、管理部門をなんとかしなきゃいけないとか。
松下電気だって、ホンダだって、Sonyだって、きっと通った苦労ですよ。
どんな会社でも、
経理や人事がいないところからスタートしていますから。
鳥越
そうですよね。
安本
そういうときに僕が行って、
経理、財務、労務、人事…総務も法務もやっていましたね。
管理畑がどれだけ大事かっていう話をして、
最初はとにかく人を入れてもらうところから始まりました。
鳥越
安本先生の本を読んでたら、
銀行借入れから採用から、全部やられてましたよね(笑)
安本
ありとあらゆることを一緒にやらせてもらいましたね。

今はどこの大会社へ行っても、すべての社内規程がありますけど、
普通、中小企業って就業規則と定款ぐらいしかないですよね。
それを1個ずつ、販売管理規程とか購買管理規程とか、
在庫物流管理規程とか…

みんなの仕事の支障にならず、改善できるように、
いろんなルールを決めていきましたね。

仕事って、流れていかないと仕事じゃないわけで、
流れていくようにルールを決めるっていうのが大事なんですね。
さっき話したフローチャートを、赤入れしながら何度も書き直して…
そんな仕事をずっとやっていましたね。

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鳥越
先生と出会われてから、何年ぐらいで上場できたんですか?
安本
94年の7月なので、4年弱ですかね。
鳥越
かなり早いですね!
先生なくしてはそんな短期間での上場は難しかったんじゃないですかね。
安本
たぶん僕がいなくても上場できたと思いますけど。

黒澤明監督の『七人の侍』じゃないですけど、
人がだんだん揃っていったんですよね。

成長途上にある会社っていうのは
どこの会社でも人の入れ替わりが結構ありますけど、
最終的には、いろんなポジションと役割がきちっと揃って
回るっていう状況になる、と。
もちろん上場が最終目的じゃなくて、
途中の目印として上場があるんですが。
鳥越
そういう、徐々に人が揃っていくっていう状況を実感されたんですね。
安本
いろいろ大変だったけど面白かったですね、
毎回毎回問題ばっかり起きるんで。
今でもそうですけどね、
よそから見るとすごい成長しているように見えても、
どこの会社にいっても問題だらけですよ。

成長すればするほど問題や課題が多く出てくるので、
現状の問題をどうやって解決して、
別の課題を見つけて、次のステップをどうやって踏み出すか…
ということを続けていくってことですね。
鳥越
柳井さんとお会いした当初から、
現在のような大企業になると予想されていたんですか?
安本
全然、まったくないです(笑)

みんなでしょっちゅう議論をしながら、
何回も何回もぶつかりながらやってきたので、
自分が考えていた以上に大きくなりましたよね。

− 正反合が本当の議論をうみだす

鳥越
上場後は、どんな感じで
ファーストリテイリングと一緒にやられてきていますか。
安本
いつ頃上場できそうかというのが明確になってきたときに、
監査役が足りないということで、僕も監査役に加わったんですね。
それで、そのままずっと今でもファーストリテイリングと、
子会社になったユニクロの、両方の監査役をやらせてもらってます。
だから、取締役会、監査役会、CSR委員会とか、
コンプライアンス委員会とか企業取引倫理委員会とか…
いろんな会議に出席させてもらっています。
鳥越
ファーストリテイリングの会議って、
まったくイメージができないんですが…
例えば取締役会とかって、どんな雰囲気なんですか。
安本
すごいですよ、議論が。

社内の取締役である柳井さん、常勤監査役2人以外は
全員、社外取締役と社外監査役なんですよ。
あとは議題に関わる執行役員が何人か加わって議論するんですが…

どの方も有名な会社の方々で、
みなさんバックボーンが違って専門分野に分かれているので、
それぞれの角度からすごい議論になります。
だから、提案が否決されたり、軌道修正っていうのはよく出てきます。
本当にワクワクしますね、議論が伯仲するので。
鳥越
へぇ…そうなんですね。
安本
よくいろんな経営者の方に、
「会議っていうのは本当に議論してないと意味がない」
って申し上げるんですけど。

いい議論っていうのは、例えば誰かが案を出したときに、
その案はその人が正しいと思っている案ですから、
それを「正」としましょうか。

それで、これに対して必ず誰かが反論するんです。
反論するとどういうことが起きるかというと、
この正しさがより強調されたり、
正しさの中で、ちょっとした間違いが指摘されたりするんです。
なお良いことは、この議論に参加してる人たちに、
このへんの議論の流れがみんな共有されることなんですね。

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安本
これがないと、
「ここに工場つくります。はい、賛成の方ー?」って言って
終わりじゃないですか。

工場をつくる意味とか、その計画の正しさとか、
資金繰りはどうするのかとか…そのへんの詳細が全然頭に残らない。
でも、みんなで議論することでそれらが理解できるし、共有される。
結果的に良いところが融合されて、その正しさがより強調され、
ゴールの案に向かって合体されるんですね。
鳥越
それこそ、多角的な視点からの議論であればあるほど、
ブラッシュアップされていくんでしょうね。
安本
この「正反合」を用いて議論する方法は、
ドイツの観念論哲学者のヘーゲルが定型化したやり方なんですね。
これを高校時代に倫理社会の先生に習ってずっと頭にあったのが
今頃すごく役に立っていますね。

どこの会社に行っても、これをやりなさいって言っているんです。
「正しいと思っても、絶対何か間違っているところがあるので
それを言いなさい、嫌われてもいいから」って。
そうすると、いい議論になるんです。

「合」でもまた違う観点から議論したら、
これまた「反」が出てくるかもしれないじゃないですか。
そうすると、もっといい「合」ができるかもしれないですよね。
こういう議論をしている会社は、たぶん間違いなく進みます。
成長しますよ。

− 論理と数字と感情の3つで伝える

鳥越
議論をするときに、
論理的であることってどれぐらい重要視されるんですか。
安本
論理的であると相手に説明しやすいですよね、納得されるし。
論理性と数値の裏付けは必要ですね。
鳥越
なるほど。
安本
数字があるか無いかで、深みが全然違うんですよ。
論理的に説明されても、
数字の裏付けがあるのか無いのかで伝わり方も変わってくる。

それと、もう1つ大事なのは感情ですよね。
さっきも言いましたが、人間って感情の塊なので、
感情っていうか、意志の強さは、
語尾や発表の仕方に出てくると思うんです。
怒ってるのかどうか、悲しんでるのかどうかとか、
たぶん、そういう感情も一緒に伝えないと駄目だと思うんです。
理路整然と論理性だけ強調しても、相手に伝わらないんですよね。
鳥越
そうですね。
たしかに感情が伝わってくるプレゼンには引き込まれる気がします。
安本
論理と数字と感情は、一緒にないと駄目だと思います。
だから僕はパソコンのメールとかも、あんまり好きじゃないんですよ。
本当は糸電話とかね、したいんですけど(笑)
鳥越
ビビビビビって(笑)
なるほど。五感に感じられた方がいいんですね。
安本
そう。だからね、鳥越さんがやっている仕事と同じですよ。
デザインだって「どうやって伝達するか」ですよね。
良いデザインができても伝わらなきゃしょうがないんで。

計画もデザインも、
ちゃんと相手が腑に落ちるように伝達できるかどうかが大切ですよね。
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