【ZEP NIGHT vol.4 開催後記】建築家:板坂諭 × UX/UI:鳥越康平 トークイベント

<ZEP NIGHTvol.4 建築家としての板坂さんが考える「残るデザイン」とは?>

 

開催日時 :1月30日(金)19:00 - 21:30
プログラム:ZEPPELIN紹介      鳥越康平
      「残るデザインとは?」  板坂諭
      懇親会

デザインという軸で考えると、手法や技術といった細部に違いはあれど、共通点が多い建築とUX/UI。そこで今回は、2012年にサンフランシスコMOMAに永久収蔵されたMushroom Lampの製作など、世界でご活躍されている建築家/プロダクトデザイナーの板坂諭氏をゲストにお迎えし、建築家として板坂氏が目指されている「残るデザイン」をテーマに語っていただきました。

「残るデザイン」とは? 板坂諭

 

<ゲスト紹介> 板坂諭(建築家/プロダクトデザイナー) 2010年にh220430名義で活動を開始、2012年に株式会社the design laboを設立。建築・家具などを題材として、単にモノの形をデザインするのではなく、そのモノに込めたメッセージをもとに生まれる、二次的なコミュニケーションをデザインされています。

2011年に中国メディア主催のMedia AwardでAnnual Original Products Design Award、2013年にはイタリアのA’Design AwardでBaby,Kids and Children’s Products Design Category銀賞を受賞。 2012年に「Mushroom Lamp」がサンフランシスコMOMAのパーマネントコレクションとして収蔵され、2014年のミラノサローネでは新作プロダクト「Balloon Chair」を出展されています。

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— 「残る」デザイン、それは住む人への時を越えたおもてなし。

最初に、身近な建築の事例を紹介すると、 聖路加には古くて良い住宅が残っているが、先日お気に入りの古民家が解体されてしまった。 建てられた当時では当たり前だったかもしれないが、使われている材料も贅沢で、 銀座から徒歩圏内に「残っていること」自体がとても贅沢で貴重だった。

しかし、建築知識が浸透していない人たちはその価値に気付けず、壊してしまった。 そこに衝撃を受けた。 可能であればリノベーションして、海外のゲストを迎えるなど、 長く残っている、歴史ある建物という価値を活かして、何かをやりたかった。

日本の建築の平均寿命は27年と言われていて、 27年経つと壊されることが多い、その現状を残念に思っている。

自分がつくるものは「残る」ことを目指しデザインしている。 終着点は「残る」で同じだが、建築はプロダクトとは違うスタンスで、 建築は定番として、プロダクトはコレクションとして残って欲しいと考えている。

建築において「残る」ことを目指し、大事にしているのは、 住む人が数年経ってようやく気付く良さや、発見を散りばめるということ。 それは、住む人への時を越えたおもてなし。 言わなければ分からないが、何年か経った後にその想いに気付いてもらえたら、 やりがいがあったなという考え方で取り組んでいる。

例えば、杉の板を張った壁。 何も言わなくても、優秀な棟梁はやっているかもしれないが、 広くとられた空間の先にある外の景色に、視線が外に流れるように柾目を並べたりする。 木には節目があるタイプもあるが、それを使わないことで、 自然と動きを誘導できるような配慮を入れている。

もしかするとそれは、UX/UIの考え方と同じかもしれない。

— デザインは形状操作ではなく、思いを残そうとするシステム。

長く残る建築にあるもの、それは「思想」という質。 もちろん建物として形も残るが、 その核にあるのは思想を残そうとするシステムだと考えている。

例えば、伊勢神宮の式年遷宮は、 20年毎に新しく建物を造りたくて行なっているのではなく、 神を祀り崇める思想を残そうとしたら、付随して建物も形として残ったと考えられる。

また、サグラダ・ファミリア教会の場合、 専任建築家のガウディが残したかったのは、奇抜な形状をした建物ではなく、 「キリスト教の思想」だったのではないかと考えている。

建物そのものではなく、システムによって今なお残り、 動き続けているということが興味深く、自分もその点に力を入れている。

また、建築は、完成したら終わりというものではなく進化する。 夏は鉄は伸び、冬は硝子が割れたりするように、新陳代謝させていくことが必要である。

これは、伊勢神宮にも当てはまる。 伊勢神宮は、建物が老朽化していくことを受け入れ、 それを20年毎に造り替えるといった、 新陳代謝していくシステムが2000年も前からでき上がっていた。 だからこそ、現代まで残り続けているのだと考えている。

人がサルから進化し、今も生き続けているように、 システムと進化は「残る」ために必要な要素であると言える。

— おもてなしという「精神」を注入するということ。

歴史あるブランドには「残る」に繋がるヒントがある。

時を越えて長く生き続けているブランドは、 時代の流れの中で「変化を恐れず許容する姿勢」を持ち、 そのブランドの製品には、歴史の中で受け継がれてきた精神が込められている。

もし、デザイン時に、形状や生産性の向上に意識を絞ってしまうと、 意図していない方向に進み、その歴史が跡絶えてしまう恐れがある。

建築であろうと、プロダクトであろうと、 「精神を注入する」ことを主目的においてデザインすることが最も重要。 そうすることでブランドの価値は上がり、選ばれ、残っていくと考えられる。 つまり、「残る」ために必要なのは形状ではなく、精神にこそある。

「精神」とは、具体的に表現すると「おもてなし」。 使う人のことを最大限想像し、使う人の気持ちになって考えることを指している。 これはまさに、UX/UIの考え方だと言える。

使う人が幸せな気持ちになって欲しいという、相手を思いやる気持ち。 使う人のことを本当に考えて作られたもの。 それこそが、精神が注入された、「残るデザイン」の形だと考える。

— 板坂さんへの質問

・訪れたい建築スポットは?

フランク・ゲーリーがルイ・ヴィトングループの為に建築した新しい美術館。 美術館には、ルイ・ヴィトンファウンデーションがコレクションしている アイテムが展示されている。

 ・パッと見て理解できない  ・図面化できない  ・見る角度で全然違う  ・色んな線が重なって絵にできない

フランク・ゲーリーの建築にはそんな要素があり、興味を惹かれている。

また、航空機の設計技術が建築に入ってきたこともあり、 それを取り入れているゲイリーのデザインは、線が自由。 XYZで育ってきた自分としては把握できないからこそ、 訪れて見てみたいと思っている。

・「進化」と「残る」はどちらが幸せか?

「進化」に興味がある。 「進化」は、残っているから進化するのであって、 「残る」の中のひとつのジャンルに含まれるが、 どちらかを選ぶのなら、伊勢神宮的な進化に興味がある。

ただし、これは建築における考えで、プロダクトは100年残れば満足。 コレクション的な「残る」ことに重きを置いている。

・「100年残る建築」と「1000年残る建築」の違いは?

まず、「美しい」デザインについて考えたとき、 美しさには「自然」と「思いやり」の2種類がある。 自然、虹などの自然現象や子供の仕草など、美しさとはそういうものにはかなわない。

「残る建築」には「美しさ」が内在していると考えている。 100年残るのが「自然」、1000年残るのが「思いやり」。

100年残る建築は、人間が頑張って真似た「自然」のデザイン。 例えば、ザハ・ハディドの建築は曲線が多く、自然を取り入れたデザインとなっている。 対して、1000年残る建築は、「思いやり」のデザイン。 伊勢神宮は、神様に対する思い、システムが形となっている。

より長く残るデザインとは、精神というおもてなし、その思いが込められた建築と言える。

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