「100年残る建築は”ザハ”、1000年残るのは…? 」時代にとらわれない「残るデザイン」とは?

建築家の板坂さんをゲストにお迎えして開催したZEP NIGHT。 板坂さんご自身の体験談を交え、 建築家として考える「残るデザイン」をテーマに語っていただきました。

プロダクト、サービス、建築、空間、コミュニケーション… ジャンルを問わず、 何かを生み出す仕事、デザインに携わる者にとって重要な デザインの本質や哲学について、改めて考えさせられる機会になりました。

そこで今回は、「残るデザイン」についてお話ししたいと思います。

− 大量生産大量消費という現代の病

私たちは、大量生産大量消費を繰り返し、 常に「最新」であることが正しいかのような時代に生きています。 iPhoneですら1〜2年での早いサイクルで買い直してしまうような時代の中で、

 「このままで本当にいいのだろうか?」 「長く自分の側に置いておきたい本当に欲しいものが見つからない。」 「携帯電話って捨てたらどうなるんだろう?」

このような悩みや疑問を抱きはじめています。

安く買える、たくさんの中から選べる、すぐに新しいものが手に入る。 こういった体験性には、確かに「便利さ」や「豊かさ」が感じられ、 ある種の心地良さ、満足感を得られるのかもしれません。

しかし、その反面、 長く使い続けることで生まれる愛着や、親から子へと受け継がれる絆など、 「長く続く」ことで生まれる体験性が失われてしまっています。

このような現状をデザインで解決するには、何が必要なのでしょうか。

− 1000年残るデザインには、継承される精神がある

ザハ・ハディドの建築は100年残るが、 1000年残るのは”思いやり"という精神、思想を残そうとするシステムです。」

板坂さんのお話の中で、最も強く残っている言葉です。

「残るデザイン」とは、デザインをシステムとして考え、 建築を通して、精神が注入されたシステムが機能していることが必要。

つまり、1000年残る建築というのは、その姿形に拠るのではなく、 人々が心の中に抱いている思い、継承していく精神そのものが 注入されているからこそ、残り続けているということです。

例えば、伊勢神宮は、20年毎に姿形を新しく造り替えますが、 そこには、ただ建物を新しくしたいという理由ではなく、 神様への思いやり、その精神を継承しようとしているからこそ。 その思いが、システムとして、今もなお1000年以上続いているのだと話されました。

「残る」ことを意識したプロダクト

板坂さんはプロダクトデザイナーとしても活躍されていますが、 同じ「残る」でも、建築とは違うスタンスでつくられています。

例として挙げたいのが、SFMOMA※に永久収蔵されているMushroom Lamp。

現在、地球上には23,000発もの原爆が存在しているにも関わらず、 日常生活の中で、私たちはその事実についてほとんど意識することはありません。 しかし、原爆のを彷彿させる形状をしたランプを目にすることで、 過去の悲惨な出来事、原爆の悲劇を思い出させ、 過ちを繰り返さないと意識するきっかけをつくりたい。 平和を願う人の心を照らす手助けをしたい。 Mushroom Lampには、そのような強いメッセージが込められています。

  プロダクトには、時代性を表したコレクションとして残されていくことを、 建築には、受け継がれる精神と共に、新陳代謝を繰り返しながら残されていくことを目指し、 デザインされている板坂さん。 今後も、精神を注入することで、日々「残るデザイン」を追求し続けていただきたいです。

− 「つくる」と「伝える」

板坂さんの「残るデザイン」のお話を通し、再認識したのは、 デザインを行う上で「つくる」と「伝える」の両軸を共に高めることの重要性です。

しかし、目に見える表面的な部分を「つくる」ことは意識できていても、 「伝える」ことについては、意識し続けなければ忘れがちになっています。

先の伊勢神宮を考えてみても、 強い精神が継承されているからこそ、 1000年という時を越え、今もなお残り続けていると思います。

その思い、精神が込められたものからは「長く続く」体験性が得られ、 時代を経ても長く愛され続け、選ばれていくのではないでしょうか。

手法や技術は異なっても、「デザイン」という点においては建築もUX/UIも考え方は同じ。

相手への思いやり、もてなす気持ちを念頭に入れ、日々の一つひとつの仕事に向き合う。 形状を描く前に、継承したい精神について考える。

私たちの手で、残るデザインが増えていく時代をつくりたいですね。

鳥越康平

※ サンフランシスコ近代美術館(San Francisco Museum Of Modern Art)の略称。 isejingu_150206

鳥越 康平

鳥越 康平

http://zeppelin.co.jp

京都工芸繊維大学、工芸学部造形工学科卒業後、韓国サムスン電子にてデザイナーとして携帯電話などの最先端機器の開発に従事。帰国後2005年10月にZEPPELINを設立。

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