”利他的UX”が作る未来 第7回「UXでつくる未来」

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第7回 UXでつくる未来

安藤昌也(千葉工業大学 工学部 デザイン科学科 准教授)

NTTデータ通信株式会社(現株式会社NTTデータ)を経て、1998年アライド・ブレインズ株式会社の設立に取締役として参画。ユーザビリティ・アクセシビリティを中心に経営戦略や商品開発をユーザー視点で行うコンサルティング業務に従事。ユーザエクスペリエンスに関する研究で博士号を取得後、2011年から現職。
現在は、ユーザエクスペリエンスや人間中心設計(HCD)、エスノグラフィック・デザインアプローチなどの研究・教育に従事されています。また、HCDおよびアクセシビリティの国際規格に関するISO/TC159(人間工学)国内対策委員などで委員を務められ、現在はNPO法人 人間中心設計推進機構(HCD-Net)理事であり、同機構認定人間中心設計専門家。専門社会調査士の資格も保有されています。

鳥越
UXの研究は、
今後10年20年でどう発展していくとお考えでしょうか?
安藤
そうですね…
「ユーザーの体験」という意味では、
例えば、私が取り組んでいるような、
もっと多様なユーザーの体験を把握できるための研究、
心理学的研究や認知的研究、
脳神経科学的研究なんかは、どんどん進んでいくと思います。

これは、人間科学としての発展なんですけど。
それをベースにして、どうやって応用していくかというところが、
多分1番重要です。

僕は、過去10年位デバイスドリブンできたことが
すごく気になっていて。
仕方の無いことではありますが、
特に、今のメーカーの方々は、
近視眼的な傾向が強すぎると感じています。

業界に限らず、今後は、
デバイスドリブンではなくもう少しビジョンドリブンというか、
「どうやって生きていきたいのか」
ということを、本気で考える必要があると思います。

もう1つは、今の話を具体的にしたような話になってしまいますが、
今の流れとして、
単に、製品やサービスを「どう作るか」ではなく、
「社会問題に対して、いかに貢献できるか」という発想で、
製品やサービスを見続けていく形に変化しているので、
そのための方法論や考え方、
哲学みたいなものが、ますます発展していくと思います。

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鳥越
私は、もっと人の日常に自然となじむ様な…
振る舞いなんかを起点に、
プロダクトを生み出すことの重要性を感じています。

携帯電話って、今はスマホが主流になっていると思いますが、
電話するという行為を考えたとき、
昔の二つ折りの携帯電話は、
振る舞いや所作に即していたと思うんですよ。

今はこういうプロダクトがほとんど無いと感じています。
安藤
成る程ね。
鳥越
今のスマホは、
映画から出てきた未来の端末をいきなり与えられた感じで、
使い方を迷わせてしまっているというか…
ユーザーを混乱させてしまっている気がしませんか?
安藤
確かに。

僕、2000年位にボストンに行ったんですね。
そしたら、ボストンの学生が、
PalmPilot (パームパイロット)※で電話してたんですよ。

もう、ププって笑っちゃって(笑)
何か変なカセットテープ…
カセットテープって発想をしている時点で可笑しいんですが、
「箱を耳に当てて喋っているなんて、可笑しいよね」って
笑ってたんだけど。

今、皆同じことをやってるんですよね(笑)

(※ 独自のOSを採用した、アドレス帳、メモ帳、カレンダー、
メールリーダーなどのソフトウェアを装備する小型の情報機器。)

鳥越
そういうことなんです(笑)
安藤
違和感を感じなくなっちゃうっていうのがね。

普通に考えたら変な光景ですよね。
まぁそれは、メタファーとして電話があったのかもしれないけど。
PalmPilot で電話をしているあの衝撃が
一般化してしまっていると思うと、何だか…
鳥越
違和感がありますよね。
今後、ウェアラブルの普及が加速するのかもしれませんが、
10年後を想像するのがちょっと怖いですね。
安藤
多分そこは、まだ探索が必要かもしれないですよね。

今、ウェアラブル端末の話は
あまりしない方が良いかもしれないんですけど。
僕が1番気にしているのは、
人の目を見なくなっちゃうことなんですよね。
焦点がずれていて、「話聞いてる?」ってなりません?(笑)
鳥越
なります(笑)
目線がぼんやりしているから、
コミュニケーションとして上手くいかないというか。
安藤
そういうことが起きてしまうんですよね。
ミクロな、人と人のface to faceの出来事なんだけど、
心理的には、物凄い大きいんじゃないかって思うんです。
僕はそこが気になりますね。

だからといって、完全に駄目だとは思っていなくて。
と言うのも、もしかすると
それを補う手段があるかもしれないと思うんです。

例えば、日本人って、そんなこと無意味だろうと思うのに、
携帯で話をするときに、「あ、ちょっと」とかこう…
口もとを覆う動作をしますよね。

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安藤
これって、明らかに何かの記号ですよね。

「私は周りの皆さんを気にしながら電話してますよ。
少しだけ許してください」
というような、やる人の意思をジェスチャーで伝えているわけです。
こういうものを活かせるんじゃないかと思う訳です。

face to faceで向き合ったとき、
焦点がずれていると、
何かこう、分かんないけどジェスチャーで伝えるみたいな。
鳥越
「ちょっと今情報が…」みたいな、何かやるかもしれないですね(笑)
安藤
やるかもしれないでしょ(笑)
これは、僕、日本的だと思っていて。

「おもてなしは茶道から…」
ということが言われていると思うんですが、
僕は、「おもてなし」と一言で言うことで、
思考停止になってしまうことがすごく嫌で。
おもてなしについて、もっとよく考えたいと思うんです。

例えば、茶室での「おもてなし」って、
実は決して心地良いものじゃないんです。
客は、亭主が出迎えに来るまで、
待合という場所で待っていなければならないんですよ。

亭主が準備できるのを音を聞きながら待つというのは、
一見、思い遣っているようだけど、あまり心地良くないですよね。
しばらく待って、ようやく入れるかと思ったら、
入口がなんとも小さい。
楽な訳ないじゃないですか、にじらないといけないし。

「上げ膳据え膳」みたいな今のおもてなしの概念とは
全く違う世界ですよね。

実は、亭主の気持ちを純粋に伝えるための装置なんですよね。
空間全体がシステムとして作法を作ったんです。

利他的UXの話じゃないですけど、
他の人たちが心地良いと思うために作法を作るというのは、
とても立派なデザインなんですね。

そういう意味で、
「おもてなしのデザインとしての茶道」というのは立派なデザイン。
その作法、振る舞いのデザインなので、
こうとか、こうとか(ジェスチャー)…分かんないけど、
「あ、ちょっと今良いですか〜」とか(笑)
鳥越
ありそうですね(笑)
安藤
何かのUXデザインをするって言った瞬間に、
そういうところまで、
思いを致して作っていくっていうのが、
僕は本当に必要なんだと思います。

鳥越さんはよく、
「スマフォを操作している姿そのものも
美しくなるよう、デザインすべきだ」
と仰っていますが、非常に共感できます。

ぜひ考えてもらいたいというか、
そういう作法をプロモーションして、
それで製品の利用が広がったら面白いですね(笑)
鳥越
良いですね。

文化が先で、
そのためのツールとしてウェアするみたいな…
安藤
そうですね、そうですね。
鳥越
しかも、そこに、ちょっとした日本の作法や
所作が入っていたらカッコいいですね。
安藤
カッコいいですね。

これ、若干忍者っぽいですね(笑)

(ページ以下画像参照)
鳥越
ちょっと忍者っぽいですね、こういうのもね(笑)

これまでのお話を伺って、
UXは、10年20年どころじゃなくて、
1000年2000年で発展していくんだろうと感じました。
安藤
そうですね。
誤解無く使われていくことを期待したいですね。
鳥越
もしかしたら言葉自体は変わるかもしれませんが、
体験というのは、
産まれてから死ぬまでずっと続いていくものですしね。
安藤
そうですね。
そこが大きく揺らぐことはないのかなという気はしますね。
鳥越
これからも、また安藤先生といろいろできると嬉しいです。
安藤
こちらこそ宜しくお願いします!
鳥越
宜しくお願いします、有難うございました。
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