”利他的UX”が作る未来 第3回「ユーザー体験への目覚め」

news_0825_01

第3回 ユーザー体験への目覚め

安藤昌也(千葉工業大学 工学部 デザイン科学科 准教授)

NTTデータ通信株式会社(現株式会社NTTデータ)を経て、1998年アライド・ブレインズ株式会社の設立に取締役として参画。ユーザビリティ・アクセシビリティを中心に経営戦略や商品開発をユーザー視点で行うコンサルティング業務に従事。ユーザエクスペリエンスに関する研究で博士号を取得後、2011年から現職。
現在は、ユーザエクスペリエンスや人間中心設計(HCD)、エスノグラフィック・デザインアプローチなどの研究・教育に従事されています。また、HCDおよびアクセシビリティの国際規格に関するISO/TC159(人間工学)国内対策委員などで委員を務められ、現在はNPO法人 人間中心設計推進機構(HCD-Net)理事であり、同機構認定人間中心設計専門家。専門社会調査士の資格も保有されています。

鳥越
安藤先生がUXの分野に興味を持たれたきっかけは
何だったのでしょうか?
安藤
そうですね…話をどこから考えていいのか…
鳥越
子どもの頃から、ちょっと良い意味で「変態的」な…(笑)
安藤
そう、変態(笑)
鳥越
安藤
子どもの頃の話なんですけど。

その頃、僕が作った1番大きなものというのが、
御神輿なんですね(笑)
鳥越

どういうことですか?
安藤
保育園に通っていた頃、「できるかな」※っていう
「のっぽさん」が出ていた工作番組を見るのが好きで。
だいたい季節に関係するものを作っているんですが、
ある日、番組で御神輿を作っていたんです。

牛乳パックの上の部分を切って、社の屋根に見立てて、
下にストローを渡して、「ほらー御神輿」って。
すごいシンプルなんですが、何かぐっときたんですよね。

(※ NHK教育テレビで、1970年から1990年まで放送されていた
幼稚園・保育園向けの工作番組。「ノッポさん」「ゴン太くん」が、
身近にあるものを使い工作の楽しさを伝える番組。)

鳥越
安藤
いいなぁ、作ろうかな…と思った矢先、なんと。
番組のエンディングで「のっぽさん」とか「ごんたくん」が、
大きいサイズの御神輿を担いじゃったりしている訳。

「えー、あれが作りたいけど、さっき作ってたのと違うから!」って、
大きい方を作りたいと思っちゃったんですね。
でも、やってみようと思っても保育園の子どもには無理じゃないですか。

さて、どうするか。

父親にプレゼンをします。
僕がどれ位、御神輿を作りたいか(笑)
鳥越
安藤
何が問題かというと、担ぐ部分なんですね。
リアルにするためには、担ぐための棒が必要なんですよ。
段ボールとかいろいろ考えたけど、ちょっと難しい。
うちの父親も職人なんで、

僕の話を聞いたら、「よし分かった」って。
ちゃんと子ども用に、鉋で削って丸く作ってくれたんですね。

次は社を作らないといけない。

母親にプレゼンをします。
どれ位、御神輿を作らなきゃいけないか。
鳥越
安藤
すると、
段ボールでちゃんと御神輿らしいのを作ってくれたんです。
気持ちがグッと乗ってきますよね。

そうすると、今度は保母さんに、
僕がどれ位この御神輿を担がなきゃいけないかプレゼンして。

その日は、お遊戯無し!ということになり、
皆で飾り付けをして「わっしょいわっしょい」って担ぎましたね。

news_0825_08

安藤
本当にマイストーリーなんですが。
この話は非常にインパクトがあったらしくて、
近所の人が何事かと思って見に来たんですよ。

そういう「人と一緒に物を作って何かやる体験」が、原体験にあって。

小さい頃から、皆と何かしたいとか、
作業の過程をどういう風に進めていけば良いかとか。
物を作っていく中で、皆が巻き込まれていくということ、
プロセスというものに、物凄く興味があった。

それをUXと呼ぶか呼ばないかは別ですが、
昔からずっと、そういうことに関心がありましたね。

大学でユーザーエクスペリエンスを研究する
決定的なきっかけになったのは、
私の恩師で、東大の社会情報研究所にいらっしゃった増田祐司先生が、
情報社会論というゼミをされていたことがあります。
そこで、情報システムというものを人はどう捉えているのか、
人と情報システムの関わりを考えるきっかけがあって。
ゼミでは経済的観点から捉えていたんですけど…

その頃から、ユーザーエクスペリエンスというか、
人が、どんな風に関わっていっているのかということに
関心を持つようになりました。

実は最近、ちょっと驚いたことがあるんですけど。
新入社員で入ったシステムエンジニアの会社の時に、
コンサルティング研修を受けさせてもらったんです。
鳥越
そうなんですか。
安藤
実際に現地に行き1週間リサーチをして、
その会社にソリューションを提案するという研修でした。

僕はホームセンターの担当になり、
「パートさんの労務管理システムを作ってください」と言われたので、
3日間、パートの皆さんと一緒に仕事をしたんです。
エスノグラフィって言えばそうなんですけど。
そういう方法でソリューションを提案したら、
非常に評価が高かったんですよ。

これって実は、私が今やっていることと全く同じなんです(笑)
鳥越

news_0825_09

安藤
何も変わらない。

当時のパートの皆さんがやっている業務に関する知識は、
一般のユーザーと本質的には何も変わらなかった、
ということに気がついたんです。

そういう意味では、現場の人たちをちゃんと見て、
その人たちがどんな風にふるまっているのかを考え、
それを1つの案にまとめて提案すると、
人は喜んでくれる、ということを感じるようになった。

話を戻すと。
新入社員の時にやっていたことと、
今やっていることが同じだということに驚いたんです。

だから、UXに興味を持つようになったのは、
昨日今日始まったことじゃなくて。
幼い頃からずっと、人の振る舞いや、物との関わり方に
関心がある人間なんだと思います。
鳥越
UXって、一言で言うと綺麗におさまっちゃうんですけど。

例えば、何かを使っている時に「ここ気持ちいいな」とか、
その時の感覚なんかを、
頭の中で繰り返し考えることってあるじゃないですか。
その考えを外に出して、
他の製品にも活かそうとしているように感じているんですけど。
安藤
成る程。
鳥越さんはデザイナーさんだから多分そうなんだと思います。

僕は基本的にはリサーチャーなので、
UXを研究している立場として
皆の考えていることを頭の中から引き出して、
「こういう風になっていますよ」と見せるのが仕事なんですよね。
鳥越
やっぱり、そこが結構楽しかったりするんですか。
安藤
楽しいですよ。
だって。

(ZEPPELINの広報担当が、
キヤノンの一眼レフをボイスレコーダーが壊れた際の
予備の録音のためだけに使っているのを知って。)


これ、キヤノンの、まさかキヤノンのカメラをね、
録音機のサポートに使っているとは、
キヤノンの人は絶対考えないですよ(笑)
鳥越

夢にも思わない。
安藤
夢にも思わないですよね。
鳥越
私もここに座る前に、
「動かさないでください」ってメモが置かれていたので、
相当構図確かめたんだろうなと思ってたら、マイクかよっ!って。
安藤
これすごい面白いでしょ。

だから、僕の場合はどちらかと言うと、デザインと言っても
かなりマクロなレベルでデザインを捉えているので、
現場のユーザーが、
思いもよらないことを考えているということを調べ、
可視化して、そこから触発された良い体験を
形にしていくのをサポートするのが、
僕の仕事かなって思っています。
news_0825_10
ZEPPELIN Inc.

ZEPPELIN Inc.

http://zeppelin.co.jp/company/

ZEPPELIN「WE CREATE BEAUTIFUL WORLDS」というビジョンのもと、 デザインを軸に、ユーザーの日常の体験を生み出す「場」です。

ZEPPELIN Inc. の記事一覧

RECOMMEND

View all