UXなんて、当たり前のはなし。第5回「デザインの可能性」

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デザインの可能性

田子學(アートディレクター/デザイナー)

株式会社東芝デザインセンター、株式会社リアル・フリートを経て、2008年株式会社エムテドを立ち上げる。現在は幅広い産業分野のデザインマネジメントに従事。デザインを社会システムの一部として大いに活用してもらうことをモットーに、様々な要素の関係性を統合的に捉えた戦略によって、個別最適化ではなく全体適正化が成り立つコンセプトメイクからブランドの確立を視野にいれてデザインされています。
GOOD DESIGN AWARD、red dot design award、JDCAデザインマネジメント賞など受賞作品多数。
現在は、慶應義塾大学大学院SDM研究科 特任教授、法政大学デザイン工学部 非常勤講師、東京造形大学デザイン科 非常勤講師を務められています。

鳥越田子さんはとても広く見識がおありだなと感じていますが、
今後作っていきたいとお考えになっているものってありますか?

田子作っていきたいものですか…(笑)
僕も、要は鳥越さんと一緒で、
普通じゃできないことを1番最初にやりたいですね。
表現したいし…と常に思っていて。

そういう視点で行くとこれから、
宇宙にデザインがすごく必要になるだろうと思います。

世界的にいうと、宇宙に進出できている国は少ないですよね。
国際宇宙ステーションもあるとはいえ、ある特定の機関しかまだ握っていない。

日本は世界的に見ても、わりと早いうちから宇宙事業に参加しているけど、
デザインの視点で見るとまだ遅れていて、実はいろいろと解決ができるところがあるんじゃないかと思ってます。
デザインが介在していくべきところがまだまだ沢山あるように思う。

例えば、日本だとJAXAがありますよね。
JAXAがもしデザインでもっと宇宙を魅了させていたならなんていつも思います。
今まで限られた機関で動いていた宇宙事業だけど、
これからはベンチャーも参加してどんどん活性化しますからね。特に。

だけど、残念ながら日本でしっかりやれるのはまだJAXAしかない。

鳥越(笑)

田子例えばですが、
「JAXAとNASAのどちらにも行ける能力があったら、どっちに行きたいか?」
…となったら、なぜかNASAに行きたいと思ってしまいませんか?

理由を考えてみると、
「NASAの方がカッコいいじゃん!」みたいな話になりますよね。

これにはショックな実体験があります(笑)
僕の子供がまだ物心つく前に、iPadが発売されて、
発売後の結構早い時期に、NASAの無料アプリが出たんです。

鳥越はい。

田子NASA公認のアプリが。
NASAのビジュアルには、全てアートディレクションが入っているんですよね。
公式に発表されるビジュアルは、画像解析を経てリアルな画像から綺麗に見えるように画像編集されているんです。

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田子すごくマネジメントが効いたビジュアルだから、
ある意味美しくカッコいい。

そのNASAアプリって、毎日のように更新されていくんです。
NASAのアイコンを叩くと、そういう綺麗な画が見れるから、
子供は、小さいながらにそういう宇宙の姿を見て「綺麗ねぇ」って言っていました。毎日「宇宙が見たい」と言っては、それを見ていました。

でも、それって「NASA=宇宙」という刷り込みですよね、正直。
彼らがそれを自覚しているかどうかは分かりませんが…

今はJAXAが同じように宇宙体験アプリを作っているけれど、
NASAのような感覚的に受け入れやすい視点で作れているかと言うと、そうではない。

同じ宇宙に行って、同じように画像を使っているけれど、
ビジュアルデザインがされているとはあまり思えなかったり…

そもそも、NASAはライブラリーのフォーマットが綺麗。
それに「自分たちの命はどこから来ているのか」というような視点も入るし…
宇宙へ情報の伝え方が感覚的に全然違いますよね。

鳥越全然違いますね。

田子伝える手段が違えば、やっていることの意義の伝わり方も全然違う…
だから、そういう風に考えるだけでも、
いかにデザインすることが重要か、ということが分かりますよね。

少し話が飛びますが、
NASAが、1960年代初頭に宇宙の概念を…特にパイロットやステークホルダーへの募集にウッドペッカーを使った話はご存知ですか?

鳥越いや、知らないです。

田子要は、パイロットやステークホルダーにとっては、宇宙って未知の世界ですよね。未知の世界だから、科学的な解説を理屈を言っても分からない。
分からないから、それをわかりやすく当時の人気アニメだったウッドペッカーで伝えた…という話があるんです。

アメリカって面白い国ですよね。
公的機関でも、このように「分かりやすく教える」ということに取組んでいて、
内容はまじめなんだけれど、見えがかりが面白いので興味を喚起する。
結果的に多くの人を集めることができる…こういう取り組み多いですよね。

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田子パイロットの公募でも、
「アニメで表現されている現実世界とはちょっと違って、
実際の宇宙はこうなんだよ」
みたいなことを、ウッドペッカーを使って興味を湧かせた。

そうすると、エクストリームな面白い知能が集まってくるんですよね。
ちょっと宇宙って興味あるな、俺が挑んでやろう…
みたいな気持ちが高まり、集まりやすくなるんです。

理論値だけで、ここからは危ないんじゃないか…とブレーキをかけるのではなく、
チャレンジ精神によって、競争心が高まる仕組みもできるというか。

そういう表現力もちゃんとデザインできている。

なんかそこまでデザイン出来ると面白いですね。

鳥越やりたいですね。
やはり、私も宇宙産業のような技術分野においても
デザインってすごく重要だと感じています。

私個人の感覚なので、一般論ではないですが、
NASAはシンプルなロケットまでしっかりと美しくデザインされています。
ロケットはそのプロジェクトに関わっている人や技術の結晶じゃないですか、
その想いや技術がデザインされている必要があると思います。
端的に造形に現れているというか。

JAXAのロケットも、ただ、そこに機能だけではない、
人間本来の感性に響く様な「セクシー」な機能美が加われば、
周囲からの注目度も高まって、今以上に日本の宇宙産業が盛り上がるのでは…とも感じてます。

また逆に、色や形…ネーミングなどのデザイン的工夫がどのような要素に効果を発揮するかにも、着目してみる価値もあるかもしれないです。

実は、ネーミングについては、サムスンの良い事例があって。
サムスンは、スマートフォンに「SAMSUNG」じゃなくて「GALAXY」って入れたんです。そうしたら、とたんに世界中で売れた。

サムスンに入社した時から、サムスンのロゴ自体も名前もカッコよくないから
変えたいって、何回も言ってたんですよ。
丁度、クリエイティブニュービジネスという、結構組織の上層部の方にいたので…

昔、サムスンのテレビの全面に結構大きくロゴが付いていたんですよね。
これじゃあこんなの誰も買いたくならないから、
せめてまずはテレビの前面からロゴを取ろうと。

皆、サムスンのロゴを買いたいのではなく、
テレビに没入できる「美しい窓」を買いたいのだと、何回も言っていました。

…で、そんな感じで日本のロケット。
日本の技術者の想いや技術が詰まったロケットを、
もっとカッコよくデザインしたい。

もちろんデザインとは見た目ではないんです。
その造形は必ずビジョンやコンセプト、そして技術的背景から導かれる…
導き出される造形であるべき。
スペースシャトルに、人はわくわくするじゃないですか。
私は、わくわくするロケットを、見たいし、作りたい。

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