UXと経営について

「UXをやることで、なにか経営に良いことがあるんですか?」

 

クライアントとお話していると、このようなご質問をたびたび頂きます。UI(ユーザーインターフェイス)はPCやスマホのディスプレイに表示される、マウスやボタンなどでイメージが湧きやすいのですが、UX(ユーザーエクスペリエンス)はなかなかイメージしにくいです。そのためUXを企画やデザイン、開発に取り入れることで、どのような”いいコト”がもたらされるのか、当然クライアントは気になりますよね。

 

そこで、ここではUXと経営の関係について、ZEPPELINのコンサルティング経験からお話してみようと思います。

 

そもそもUXってなんでしょう?

UX (ユーザーエクスペリエンス:User Experience)とは、「あるサービスやアプリケーションを利用するユーザーが経験するあらゆる体験」、とよく説明しています。例えば、Googleで何かを検索するときに以下のような経験をしていると捉えられます。

 

探したいニーズが発生する → Googleで検索しようと思う → スマホで検索して検索結果が出てくる → 求めていたものが見つかって満足 → 次の行動に移る・・・

 

もっと細分化でき、この先の続きもまだまだありますが、このような一連の流れで私たちは日々サービスや商品を使っています。この一連の流れがUXです。上記のケースで、期待したものが検索結果から見つからないかもしれません。あるいは、両手がふさがっていて、そもそも検索キーワードを打つことができないかもしれません。このような目的が達成できない経験もひっくるめて”UX”と、ZEPPELINは考えています。

 

UXを改善すること、とは?

ZEPPELINはコンサルティング業務として、主にこのUXに関連するサービスをクライアントにご提供しています。例えば、すでにあるサービスやアプリケーションがどのような体験をユーザーに提供しているかリサーチし、どこをどのように改善すればもっと使いやすくなるのか、などのソリューションを提示しています。アプリの使い勝手を向上するユーザビリティの改善も結果として行いますが、前提として「ユーザーにどのような体験を提供するか?」ということが定まってなかったり、それがUIの設計骨子として反映されていなかったりすると、いくらユーザビリティや見栄えを変えても本質的な改善にはなりません。というのも、ユーザビリティはある目的を達成するための最もわかりやすい設計が求められますが、ユーザーに提供したい体験と目的がズレていたら、そもそも意味が無いからです。極端な例ですが、スマホの電話アプリのUIを考えるときに、「着信拒否機能があるのにユーザーが気づかない」という課題に対して、「着信拒否機能をもっと目立たせる!」と目的を設定してしまうと、「アプリのトップに着信拒否ボタンを表示する」などのソリューションに落としこんでしまう可能性があります。でも、ユーザーにとっては、着信拒否したい電話がかかってきたときや、その後に、スムーズに目的の機能が使えればいいですよね?この、”ユーザーはどんな時に、どのようにしたいと思う”という発想で課題解決に取り組むことが、UX的に物事を捉えることです。なるほど、あまりにも当たり前のことですね。

”UXを改善すること”とは、ユーザーの体験にフォーカスして、ユーザーが直面する本質的な課題を解決すること、といえます。

 

なぜUXが経営に役立つのか?

さて、ここからが本題ですが、UX的視点やアプローチを取り入れることが、なぜ経営に役立つのかを考えてみます。大きく分けて、理由は二つあります。”良い商品をつくること”と、良い商品を作る”チームをつくること”、です。

 

良い商品をつくるのに、なぜUXが大事なのか?

Appleとソニーの音楽プレーヤーの話が、頻繁に例として用いられますが、近年商品の価値が、”ハード単体のスペック”から、”製品やソフトウェア、サービスを通じて得られる体験”にシフトし、「企業はどのような体験を提供するかをもっと考える必要がある」、と言われています。これには、IT技術の向上にともないハードとソフトのエコシステムが商品価値を大きく左右していることや、新興国のハードウェア生産技術の向上によりハード単体で競争優位性を保つことが難しくなってきた背景があると思います。いずれにしても、ユーザー体験(=UX)を抜きにしてコンシューマービジネスを伸ばしていくことが困難な状況にあることは、一般的な見解となっているでしょう。劇的な性能の差はないのだけども、使い勝手がよく、私の生活にフィットする。ちょっと価格は高いけど、明日もこれを使いたいな。そう思ってもらうプロダクトをつくるにはUXに重視したものづくりが欠かせません。

また、デザイン性についても、上記の競争優位性の観点において近年重要性が高まっている要素です。Appleもソニーも、高いプロダクトのデザイン性で多くのファンを惹きつけてきました。さて、ZEPPELIN代表の鳥越康平は「デザインとは言語であり調和である」と常日頃言っているのですが、この定義はUXに強く関連します。ユーザーに対してどのような体験を伝えるか?(=言語)と、ユーザーの日常のコンテキストに沿っているか?(=調和)がデザインの良し悪しを決めるとするならば、デザインを考えることはUXを考えることとほぼ同義と捉えられるのではないでしょうか。したがって、我々がグラフィックデザインをご提供する際はかならずUX視点からデザインを考えます。

 

いい商品をつくるチームをつくること、とは?

あらゆる商品やサービスは、当然ながら一人では作れません。ビジネスプランを考える人、デザイナー、エンジニア、マーケター、などなど、様々な職種の人が関わることで一つのプロダクトが作られます。チームワークの良し悪しが、プロダクトの良し悪しに関係することは明らかです。

ソフトウェア開発の分野ですと、チームを効率的に機能させるためにプロジェクトマネジメント手法が意欲的に研究されています。ウォーターフォールプロセスや、アジャイルプログラミング、スクラムプロセスはそれに当たるでしょう。現在多くの企業が、こういった新しいプロジェクトマネジメント手法を取り入れることにチャレンジされていますが、ZEPPELINはこれに加えて、作り出したプロダクトが提供するUXをチームメンバー全員がクリアにイメージできるようなプロセスの導入をおすすめしています。

例えば、あるアプリを制作するにあたり、実装者やデザイナーにそれぞれ機能要件を伝えるとします。要件定義書を長い期間かけて綿密につくり共有したとしても、そこには必ずモレや個人の解釈が発生します。そこの時に、最終的に提供したいUXのイメージをメンバーで共有できていれば、それぞれの役割において最も効率的で正しい判断ができます。要件定義の内容を越えて、将来実現したいUXのために「データベースはこのように設計しておくべきだ」、「世界観はこのようにデザインすべきだ」、「プロモーションはこのように浸透しよう」、とそれぞれが熱く語り合うチームだったら、ワクワクしませんか?我々が提供しているワークショップやコンセプトムービー制作はこのようなチームを作るためのソリューションとして、位置付けています。

 

まとめ

今回は、”UXがどう経営に良い効果をもたらすのか”について、ZEPPELINのコンサルティング経験からお話しました。一つ目は、良い商品がつくれるから。ユーザーに良い体験を与えるのが良い商品の条件になっているということからご説明しました。2つ目は、良いチーム作りができるから。どのようなUXをユーザーに提供するのかというビジョンをメンバーが明確にイメージできると、それぞれ主体的に判断でき、最終的に良い商品作りにつながるという話でした。

 

みなさんも、これから企画するプロダクトや今現在担当されている商品が、ユーザーにどのような体験を提供しているか、また、提供すべきか、考えてみてはいかがでしょうか。

鳥越 康平

鳥越 康平

http://zeppelin.co.jp

京都工芸繊維大学、工芸学部造形工学科卒業後、韓国サムスン電子にてデザイナーとして携帯電話などの最先端機器の開発に従事。帰国後2005年10月にZEPPELINを設立。

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